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官民連携講座レポート「地方創生カレッジ in 枝幸」
「地方創生カレッジ in 枝幸」が、2022年1月9日(日)、2022年1月10日(月・祝日)の2日間開催されました。
開催概要
主催 | 公益財団法人 日本生産性本部 |
事務局 | 有限会社 イー・クラフト |
【テーマと概要】
北海道枝幸町は、毛ガニやホタテなど豊かな農林水産資源に恵まれており、町内には枝幸高校という公立高校もあります。しかし、大学進学時に都会に出て、町に戻ってこない若者も多く、人口減少、労働力不足に悩まされています。全国の他の自治体も、枝幸町と同様の問題を抱えているところが少なくありません。 本講座では、「若者が住みたくなるまち、帰ってきたくなるまちを考える」を全体テーマに高校生中心に参加を呼びかけ、「枝幸町を住みたくなるまちにするために何を実施したらいいのかを考える」という目標を設定しました。その目標を達成するために、講座第2回の最後に「バーチャル町長選挙in枝幸」を実施。それに向けて、講演、グループワーク等をもとにして、高校生を主体とする参加者全員で選挙公約を考えていきました。こうしたプログラムにより、「若者が住みたくなるまち」のイメージを参加者全員で共有し、自身の住むまちで取り組むべき施策を考えるためのヒントにしていただきました。 なお、コロナ禍が収束していないという状況を踏まえ、本講座はオンラインを利⽤して開催しました。これにより、枝幸高校生や枝幸町に住む大人の方だけでなく、参加対象を他地域の高校生や大人にも拡大することが可能になりました。
下の画像をクリックすると、本セミナーのチラシ(pdfファイル)をダウンロードいただけます。
参加者
30人(講師2名を含む)
[所属]
高校生、高等学校 教頭、学校 職員、地方自治体 職員、会社経営者、公営塾 職員、大学 職員、教育コンサルティング事業会社 社員、編集者
※両日とも、枝幸町に限らず全国の皆さんに参加していただきました。
参加にあたっては、「地方創生カレッジ」eラーニング講座において、本事業のテーマに関連した講座の事前学習を行っていただきました。
プログラム
■第1回:2022年1月9日(日)13:00~16:00
【講演①】
◆藤岡慎二氏
・所属:株式会社PrimaPinguino 代表取締役
産業能率大学経営学部 教授
総務省 地域力創造アドバイザー
OECD 日本イノベーション教育ネットワーク連携研究員
・プロフィール:現在は北海道から沖縄までの高校や地方自治体での教育改革、教育行政改革など全国の教育を通じた地域活性化に携わる。
・講演タイトル:「教育の魅力化による地域の活性化~全国に拡がる高校魅力化プロジェクト~」
【講演②】
◆齊藤歩氏
・所属:枝幸町 まちづくり推進課 戦略推進グループ
地域おこし協力隊員
公営塾塾長
・プロフィール:将来の地域人材を育成する「ふるさと教育推進プロジェクト」の一環として設置される公営塾の立ち上げのため、2020年5月枝幸町役場へ入庁。2021年度の公営塾正式開設より塾長を務める。
・講演タイトル:「公営塾を基盤に進めるふるさと教育」
■第2回:2022年1月10日(月・祝日)13:00~16:05
【講演】
◆藤岡慎二氏
・所属:前掲
・プロフィール:前掲
・講演タイトル:「若者が“還り”たくなるまちづくり」
【高校生プレゼンテーション①】
新潟県立阿賀黎明高等学校の生徒さん
・プレゼンタイトル:「阿賀町×燻製 ~地元の食材を生かして~」
【高校生プレゼンテーション②】
石川県立能登高等学校の生徒さん
・プレゼンタイトル:「のと高校に地元の新鮮な水を送る」
【高校生プレゼンテーション③】
愛媛県立三崎高等学校の生徒さん
・プレゼンタイトル:「みさこうのさいこうの取り組みについて」
【グループワーク/公約発表/投票/新町長インタビュー】
参加者を全部で5つのグループに分けて、グループごとに、枝幸町を「住みたくなるまち」にするための選挙公約を議論しました。グループの代表者(高校生)は町長候補として公約を発表し、選挙を実施した後、当選者に意気込みを語っていただきました。
各グループが発表した公約を、グループ1から順に以下に記します。
1.まちの特産品を生かした「枝幸シチュー」を開発。町内に加工場も建設して、防災用のレトルトシチューも販売する。
2.枝幸高校に水産科を作ってトップリーダーを育成。そのリーダーが全国で学んで枝幸に多様な技術を持ち帰り、水産業の最先端技術を生み出せる「好円社会」を実現する。
3.最新技術を使って漁業、農業を発展させ、企業誘致を行い、高校生がワクワクできる場所をつくることによって、枝幸をスマートシティに変える。
4.動く海上レストランをつくる。レストランでは料理教室も開催し、ゴミの海上投棄を防ぐ監視塔の役割も兼ねる。
5.商店街を復活させ、枝幸を“都会化”する。そのために、海の幸やジビエ料理を楽しめるレストランや、踊り、音楽を楽しめる大規模なホールをつくる。
※コロナ禍が収束していないため、参加者は事前登録者に限定し、オンライン開催としました。
※開催後も、地方創生「連携・交流ひろば」交流掲示板で、参加者・事務局間での意見交換がなされています。
ワークショップ等の成果
ワークショップ等の成果は、下の図表のように整理されました。pdfファイルもダウンロードいただけます。
(「地方創生カレッジ in 枝幸」ワークショップ等の成果のポイント) (445KB; PDFファイル)
参加者の声から
【藤岡氏の講演(1日目)について】
- 「教育に投資しない地域は生き残れない」という言葉が印象に残りました。
- 「地域みらい留学」が印象に残りました。地方は特に、財政難、人口減少などすべてが最先端だからこそ学ぶことがあり、一次産業の体験、伝統文化の学習など、魅力いっぱいで実際に留学してみたいと思いました。
- コロナの影響で海外に留学できなくなってしまいましたが、国内でも「地域みらい留学」を通して学べる機会があるのだなと初めて知れて、とても興味深かったです。そして、学校同士が連携して「地域交換留学」を実施するのもいいなと思いました。違う場所の魅力を融合させて、新しい発展につなげることも可能ではないでしょうか。
- 地域から高校がなくなることによる地域経済への影響を事例・分析などの様々な情報から知ることができて、改めて高校存続の大切さを考えさせられました。高校魅力化はあくまで手段の一つであり、その地域がどんな地域・社会をつくりたいのかという視点が大事だなと思いました。
【齊藤氏の講演(1日目)について】
- 他の地域の学生と交流できる活動が刺激になっていいと思いました。
- 「何のために勉強するのか」というフレーズにとても考えさせられました。今、私が一番に考えなければならないのは「大学進学」についてですが、それは通過点でしかなく、そこで何を学び、社会にどう貢献できるのかから考えなければいけないのかもと感じました。
- 教育を通じてご自身の知らない土地に入り、公営塾という新しい「場」(小生はあえて“BA"と呼んでいます)で奔走されるスタンスに感服しています。
【藤岡氏の講演(2日目)について】
- 「ソーシャルキャピタルの高さはイノベーションの発生と負の相関がある」という言葉が印象に残りました。
- 「課題が多い地域だからイノベーションが生まれる」という言葉が心に残りました。
- アイデアを受け止めてくれる、聞いてくれる環境はとても魅力的で、自分もそのような地域に行きたいので、もっとそのような地域を増やしたい、自分が今住んでいる地域をそう変えていきたいと思いました。
- 還りたくなるまちにするために3個のT(技術[Technology]、才能[Talent]、寛容性[Tolerance])が重要で、特に寛容性が大切という話が印象的です。
- 藤岡先生は、都市に人が集まる理由を論理的に教えてくださり、「立地の概念が変わる」ともおっしゃいましたが、未来になるにつれて、「都市へ行きたい」という思い自体もなくなると感じました。というより、そういう社会にするのが私の理想です。都市ではできなくて地方にしかないものをそこで伸ばし、発展していける環境を整えていけば、遠い将来、より良い「立地」ができていくのではないかと思いました。
- 地域が本来持つ魅力だけでなく、地域の人々の意識や環境を整え、クリエイティブクラスが住みたくなるようなまちづくりをしていくことが今後大事になってくると感じました。
【高校生プレゼンテーションについて】
- 地域で人材を育成し、循環する取り組みが印象的でした。
- 高校生たちの地元愛とプレゼン能力の高さに驚きました。
- 同じ高校生とは思えないほど、堂々として独創性に溢れたものでした。
- 高校生の時点で積極的にいろいろなことに興味を抱き、活動していることが素晴らしいと思いました。また、自己完結せずに周りを巻き込んで活動を発展させている姿がとても印象的で、自分も頑張らなければならないなと感じました。
【「バーチャル町長選挙in枝幸」について】
- リアルに問題解決策を考えることができ、非常に有意義でした。
- この経験ができたことにとても感謝しています。「住みたくなるまちづくり」というキーワードだけでいろんな視点や立場からこの問題を見つめることができ、これは、社会全体で起きている問題の解決にも使える方法だなと発見することができました。
- 参加者が当事者になって議論する「町長選挙」はとても斬新なアイデアだと思います。
- 初めのころは、どうなるのだろうと少し不安に感じていたところもありましたが、参加者の皆さんが積極的に意見を出し、活発な議論ができていたのではないかと思います。町長候補の演説では、どのグループもとてもいいアイデアが出ていたと感じました。
【今回の講座で得た気づきや発見について】
- 「動く」ことの勇気、大切さを学びました。
- 自分が住む土地を離れ、それとは違う環境、考え方に身をおいた時、すぐに受け入れられる柔軟性が少しはついたと思います。
- 阿賀黎明高校の高校生が話した燻製BARのように、自分の好きなことを追求して地元にも貢献できる活動を自分でもやってみたいと思いました。どんどん大人を巻き込んでいく姿がすごく、それに乗ってくれる大人もいて、純粋に私もやってみたいと思いました。
- 東京に住んでいる身からすると、自分の起こした行動がまちの人に感謝されたり、影響を与えたりできるのはすごく魅力的です。「都市」にはたくさん人がいますし、誰かが解決してくれるだろうと決めつけていましたが、身の回りで何か困っていることや不便に感じていることを探し、私が解決していく存在になりたいと思いました。
- 学校(高校)を“BA"として、教育だけではなく、多くの観点から地方創生を展開していくことは、その地にある企業の経営者にとって、ESG経営の重要性を示唆するものだと感じております。私も自身の関係するエリアで、こうした観点から物事にアプローチしていこうとの思いです。
- 人口減少による人手不足・後継者不足が叫ばれる中、AI・IoT・ビッグデータなどを活用した産業のDX化、それらを活用し未来の産業を支えていく人材育成は積極的に論議されるべきと思います。地域で分けず、ノウハウの共有や提携など、全国的に前へ進んでいければいいなと思います。
お問い合わせ先
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公益財団法人日本生産性本部 地方創生カレッジ事務局
E-mail:college@jpc-net.jp
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